オタクのあそぶんがく

140の枠を超えて

放課後さいころ倶楽部 存在しないカタン回[二次創作]

※ 注意事項 ※

・『放課後さいころ倶楽部』の二次創作です。

・筆者は執筆経験がありません。こんな二次創作で小説デビューとか草

・思いつきでこれを書いている筆者は、アニメを一周しただけで原作を読んでいません。キャラ解釈が大きくズレる場合がありますが、温かい目で見守ってあげてください。

・筆者は別にカタン強くは無いです。そのため配置決めの考察がガバる可能性がります。温かい目で以下略

・内輪ネタ多めです。「エアフィン」って何やねん

 

 

 

 

 

 

 

  − 某日、さいころ倶楽部にて −

 

「ねえ、ゲームしようよ!」

綾が空いた店内の静寂を切り裂く。美姫やエミリー、早上がりの翠は皆ソシャゲに勤しんでいた。最近流行りのアプリでイベントが開かれているらしい。

「良いわよ。ちょうどスタミナが切れたところだから…5人いるわね、何で遊びましょうか?」

スマホから顔を上げながら翠が言う。5人、翠は店長のことも勝手に頭数に入れているようだ。

「俺は仕事中なんだが…まあ良い、これなんてどうだ?」

やれやれ顔の店長が持ってきたのは、『カタンの開拓者たち』である。普段サイコロを振らない放課後さいころ倶楽部のメンバー達にとっては、ちょうど良いゲームである。しかし、カタンの開拓者たち、5人では遊べなさそうだ。

「Oh, カタンですネー!ドイツでやってましタ!」

「あ、カタンならウチもやったことあります」

次々と画面から離れるメンバー達。カタンの機運が高まる。

「でも5人やから、サイコロでプレイヤーを決めないと…」

困り顔の美姫。仕事中のはずの店長も、サイコロに運命を委ねているらしく4人に譲る気は無い。店の行く末が心配である。

 

「よーし、じゃあ私から! …やったー、11だ!!」

「私は7ね」

「10デース、1着にはなれませんネ」

「ウチは4、これはプレイできんかも…」

「まあ見てろ、俺が1着で理解(わか)らせてやるよ…ってオイ!! 2か、これじゃプレイ出来ないなあ…仕方ない、ガヤやるか」

「ちょっと店長、お店ガラガラだけどまだ営業中ですよ?」

「こうするんだよ…『さいころ倶楽部 本日の営業は終了致しました』、な?」

「店長…」

顔を引きつらせる翠を横目に、美姫とエミーが盤面を作っていく。綾はチャンスカードをシャッフルしている。「私達、久々にサイコロ振ったね!『さいころ倶楽部』なのにね!」とか言いながら。楽しそうで何よりだ。

 

「ってことは、1着が綾ちゃん、2着はエミーちゃん、3着は翠ちゃん、で4着はウチってことやね」

盤面が完成した。これは…

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「木が激安で、麦が渋いデース…」

「クソカタンね」

カード資源が全般的に入手しにくい、微妙な盤面になってしまった。ガヤに回った店長は一安心。ニコニコしながらお手洗いに向かっていった…

 

「嘆いても仕方ないわ、配置を決めましょう。綾から置いて」

「わかった!」

麦に加え羊と鉄も高めの盤面。1着の綾はどこに置くのか、残る3人は見守る。ちゃんと考えたか否かは定かでないが、綾は自信満々に赤の家を置いた。

「赤目は出やすいんだよね!だったら、ここしか無いよ!!」

赤の家が建ったのは6.8.9の土地。木カタンを狙っているのだろうか。カード資源の入手が一見困難そうだが、一般港の取引でも決して戦えなくはないだろう。「麦が欲しい!」とのことで、道は10麦方向に伸びる。

「10麦を抑えなかったんですネ。なら、ワタシはココに置きマース!」

青のエミーが置いたのは6.9.10の土地。麦は高値だがゲームの攻略に欠かせないと考えるエミーは、現状最も求めやすい麦を確保することにし、道を海の方向に伸ばした。土の専門港が見える上、羊の欠損は回避できそうな安定択だ。

「あー!そこ狙ってたのに…」

「綾、それは欲張りよ…」

配置を決める際は、他プレイヤーが狙いそうな箇所をある程度予想しながら進めなければならない。麦が高い盤面で、最も安い麦に向かって道を伸ばすのはあまり得策では無い。

「そっちに道を引いちまったか。まあ、2軒目を工夫するしか無いな」

戻ってきた店長に慰められる綾。続けて黄色の翠が配置決めに挑む。

(そうね…この盤面だと、道王を取るのはかなり厳しいわ。でも開拓カタンをすれば展開力で二人に負けるかもしれない…そしたらカードカタンを狙うべきかしら?でもカード資源を安定して取れそうなパネルは見当たらないし、でも…)

(翠ちゃん、めっちゃ悩んでる…)

長考に入る翠。4着に控える美姫も他人事ではない。

「ゴメンなさい、少し時間を頂戴」

険しい表情のまま翠は断りを入れ、脳内シミュレーションの旅に出た。

………

こうして、10分が経過した。美姫は考えるのに疲れ、余ったところで何とかすればいいや精神でソシャゲを取り出した。エミーは悩み続ける翠を心配そうに見つめ「ココどうですカ?」と助言を出すが、敵に塩を送られていると翠は聞き入れない。店長は「配置決まったら教えてくれ」と店の後片付けを進めることに。綾に至っては寝てしまっている。

「みんな、お待たせ!私はこの盤面で増築を狙って、カード独占カタンで勝ちを狙うわ!!」

長考の末、翠が置いたのはなんと9.11.11の土地。一般港と9鉄があるとはいえ、11が出ないと話にならない危険な配置に見える。そうまでして増築がしたいのか…そうまでして増築がしたいのである。

「11が出れば私の勝ちね」とドヤ顔を見せる翠は、これはこれで楽しそうである。ちょうど美姫のスタミナが切れ、綾が目を覚ました。

「じゃあ、ウチが置くよ」

4着は灰色コマの美姫。麦がどうにも厳しいと判断した美姫は、2.4.5の土地に1軒目を、4.6.12の土地に2軒目を置いた。道はそれぞれ10木方面と港方面に伸びている。

「3.5.6と迷ったけど、3麦は信用してへんからこう置きます。初期資源は麦がある方で。弱い目を二つかんでいて厳しいままやけど、今回は少しロマンを求めて自分の可能性を広げてみます…」

3麦を諦め、一般港の獲得を全力で目指す方針を採った美姫。一般港を取る頃には4鉄で2枚獲得することが可能になる。麦が実質の欠損になるため快勝は難しいと思われるが、配置の意図を話す美姫のその瞳には覚悟が宿っていた。

「面白い置き方をするわね。でも増築とカード独占を狙う私も、負けていないわよ?」

ニヤニヤしながら翠が置いた二軒目は、なんと8.10の沿岸部。これでは…

「わーーーん!!翠ちゃんまで、ヒドイよ!!」

「残念ね綾、でも勝負は非情なものなのよ」

1本目の道が腐ってしまった綾が悲痛な叫びを上げる。黄色の道は5.8を目指して引かれた。初期手札に鉄が1枚もないが、本当に翠は増築の夢を叶えることができるのだろうか。

「ワタシの番ですネ。綾に木の専門港を取られる訳にはいかないので、ココに置きマス」

巡ってきたエミーは、青の二軒目を8.11の沿岸部に建てた。綾の木暴走カタンを阻止できる上、全資源カタンを実現した。8羊を囲うことに成功すれば勝利はかなり近づきそうだが、綾の存在が気になる。場合によっては家を建てるために何本か道が必要になるため油断は出来ない。道は捨て気味に砂漠方向へ。

「じゃあ、私はここ!翠ちゃん、お返しだよ!!」

そう言いながら綾が置いたのは、なんと5.8の沿岸部。翠への報復に特化した、驚異の2資源カタン(港なし)である。

「あのねえ綾、そこに置いてもあなた勝てないわよ…?」

「確かに、綾ちゃんは羊と麦を入手しないと家すら建てられなくなるんよ?」

「あうぅ…」

翠と美姫になだめられた綾は、助言を受け入れ3.8の沿岸部に二軒目を建てた。青の羊カタン計画は消えたが、二軒目の判断としては比較的マシではないだろうか。

「おう、終わったか」

誰もまだ呼んでいないのに、ベストタイミングで店長が登場。本当に店を閉めてガヤに徹するらしい。

「みんな、初期資源は取ったね…?」

飛び交う火花に飛び交う4者の視線。自信満々の綾、勝ちルートを探すエミー、カードと増築を狙い不気味に笑う翠に、少し表情をこわばらせつつもどこか楽しそうな美姫。戦いの幕が上がる。

「行くよ!」

「「「「「レッツ、カタン!!!」」」」」

 

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1巡目

赤:2点 羊 麦 

青:2点 羊 鉄 

黄:2点 木 麦 

灰:2点 木 麦 鉄 

サイコロ:8 9 8 9

 

早速サイコロの出目が怪しい。

「あ、8で2枚引けるよ!やったー、最速で道だ!!」

羊の専門港を生かし、満面の笑みで道を引く綾。田上がいたら今頃だらし無い表情を見せていたに違いない。対して、出た目が悪いためか残り3人はすることがなくキープ。美姫に至っては資源を引けてすらいない。

 

 

2巡目

サイコロ:8 11   4 3

 

「家だよ!!もう建った!!」

「イエッ」

「店長、黙っててください」

「…って11じゃない!エミー、やるわね!!」

「Oh, 戦犯デース…」

出目に恵まれた綾は、早くも3.6に家を建設。3点になった。翠に怒られた店長はレジの集計作業へと向かった。

続くエミーは6土方面に道を敷設。店長を追い出した直後に11が出てしまった翠は、木の4-1交換を使い早くも9.11.11の家を増築。こちらも3点で綾に並ぶ。7度目のサイコロでようやく資源を手にした美姫は、4鉄方向に道を敷設。全員何かしらのアクションを起こした。

 

 

3巡目

赤:3点 木 土 羊 麦2

青:2点 土 鉄 鉄

黄:3点 羊

灰:2点 麦 鉄 鉄

サイコロ:4 11  5 7

 

「翠ちゃん、今度こそ仕返しだよ!!」

「悔しいけど、道の展開力では勝てないわね…」

盗賊が動き出す3巡目。

サイコロに恵まれる綾は道を5.8方面に敷設、黄の進路を妨害しにかかる。エミーは再び11を出す。これでは本当に戦犯になるかもしれない。初の7を出した美姫は、麦の奪取を狙う。

「木は今多分誰も持ってへん…なら、麦を持ってそうな綾ちゃんからで」

「麦じゃないけど痛いよう…」

「今は要らない…」

綾と翠を妨害すべく8木に盗賊を置いた美姫が綾から引いたのは羊。7枚抱えながらも、貴重な麦を使ってしまうカードはリスクが高いためキープ。

 

 

4巡目

サイコロ:7 6 4 8

 

「7だ!翠ちゃんにいい思いはさせないよ!!」

「ホントにソコで良いんですカ?」

7を自引きした綾が盗賊を置いたのは、なんと11鉄。会場に微妙な空気が流れる。晴れて6で木を引いた美姫は、4鉄の一般港を解放し3点に。美姫のカタンが本格始動しようとしていた。

 

 

5巡目

サイコロ:7 9 9 5

 

「また7だー。じゃあココ!」

「激痛デス…というか、10が出ませんネ!このサイコロ、クソです!!」

「エミーはそんなこと言わないわ」

「じゃあこの鉄でチャンカを引くよ!」

「1!2!3!これで綾は4点ね!!」

また7を出した綾。盗賊は6木に動く。木の専門港を持つエミーに取ってはかなりの痛手である。美姫から鉄を奪った綾は、そのままチャンスカードを引きポイントを獲得し翠の元気なカウント通り4点になった。

「あ!連続で9!不正だよ!!」

「クックック、この鉄で贅沢に道を引くわね」

鉄が溢れる翠は、一般港を獲得するため土に変換し道を伸ばす。チャンスカードを引くこともできたが、10麦が渋いため港を優先事項にした。

 

 

6巡目

サイコロ:4 7 7 8

 

「やりました、7デース!!」

「あかん、バーストしてもうた…」

「気を取り直して、ウチはチャンカを引きます…!」

綾は再度道を敷設、5.8の建設を待つ。続くエミーの7により美姫はバースト、カード資源を残し盗賊は綾妨害のため6木に。綾から運良く麦を引いたエミー、ここで念願の三軒目を6木の土専門港に建設し3点に。翠の7で盗賊は9土に、綾から木を奪う。7が多く、なかなか進まない。美姫はカードを引き、騎士を獲得。

 

 

7巡目

赤:4点 伏せポイント

青:3点

黄:3点

灰:3点 伏せ騎士

サイコロ:8 10   5 7

 

「Wow!10が出ましたネ!!」

「おお!念願の10よ!!」

エミーが10を引いて大喜び。ニコニコ顔のエミーはカードを引き騎士を獲得。翠は鉄の専門港を活用し、9鉄一般港に家を建てる。これで彼女も4点に。7を出した美姫は盗賊を10麦に移動、翠の表情が一瞬で沈む。

 

 

8巡目

サイコロ:4 5 6 9

 

「4よく出るね〜」

「10なんて1回しか出ていないのよ…?」

「今鉄ばっか持ってても…」

エミーの騎士で盗賊は4鉄に移動、美姫から鉄を奪った。

「あーーーっ!!6でエミーちゃん好きな資源1枚だよ!!」

「Yes♪」

「ウチもリッター使います」

そう、6木でエミーは2枚引けるようになったのである。2枚引ける点は綾も変わらないが、彼女は専門港どころか一般港すら持っていない。続く美姫の騎士で盗賊は8羊へ。綾には特に痛い。奪った木で5.10方向に道を伸ばしターンエンド。

 

 

9巡目

サイコロ:4 11   6 6

 

大量キープを嫌った綾は木4枚を麦に変換しターンエンド。早く港が欲しいものである。エミーは本日3度目の11、こんな場面でも百合カプの精神を忘れない。持っていた木と土を2枚ずつ使い、3.11方向に道を延伸。鉄を大量に引いた翠はカードを引く。

(やった、モノポリーだわ!これで増築して、圧倒的カードカタンを展開するわ!!)

彼女が手にしたのは独占。引いた瞬間から、翠は増築の欲に取り憑かれてしまった…

「ここで増築します」

「ヴェエエエ!!いつの間に!?」

美姫は一般項をフル活用し、4.6.12の家を増築。4と12で増築のロマンを狙えるように。綾のオーバーリアクション(本人は至って真剣)にも慣れてきたところである。

 

 

10巡目

サイコロ:8 5 10   3

 

綾は5.8に家を建設し更に道を5土の一般港方向へ伸ばす。あと1本で道王である。エミーも木の専門港によって3.11に家を建設。4点目を獲得する。翠は10の自引きによりカードで発見を獲得。伏せカードは2枚に。一方で美姫は思ったように資源を引けず足踏み。全員が4点以上を獲得し、カタンは中盤戦へ突入する。

 

 

11巡目

赤:5点 伏せポイント

青:4点

黄:4点 伏せ独占/発見

灰:4点

サイコロ:8 6 7 6

 

サイコロ11巡目、ここで前半二人に大きな展開が。

「やったー!道が5本になったよ!道王だね!!」

「増築デス!専門港がいい仕事してますネ♪」

綾は道をさらに延伸し道王に。盗賊に止められている8羊で今頃家が建っていたと考えると、損失は大きい。エミーは6.9.10を増築し、木と土の専門港を大幅に強化。出目によっては道王も視野に入るように。翠の7で盗賊は9土に移動。一方で美姫は麦が足りず家が建たない。仮想点を入れると美姫だけが4点に取り残されている状況となった。

 

 

12巡目

サイコロ:6 7 5 8

 

「道を2本伸ばして5本に、後3本繋いだら島を縦断してしまいますネ♪」

「エミーちゃんやめてぇぇえ…」

エミーの7で盗賊は8木へ。足踏みする綾から麦を奪い、さらに道を2.3.12方向に伸ばし5本で綾の道王に並ぶ。その姿はドイツの城壁都市ローテンブルクのよう…ではなかった(ローテンブルクは縦長ではない、大人しく万里の長城に喩えよう)。

「行くわ…エアフィンカード!!」

高らかに宣言した翠は、騎士を獲得。目指していたカード独占からのリッター王までの道は長そうだ。悲しいことに、またも美姫に進展はなし。

 

 

13巡目

サイコロ:3 4   8 5

 

ようやく綾の五軒目が一般港に建つ。残念ながら道王維持のための延伸は出来ず、「うぇえ…」と声を漏らしながら悲しい顔でエミーにサイコロを渡す。が、エミーが出したのは4。1本も延伸できない痛恨の一振りとなってしまい、綾の表情が明るくなる。翠は騎士を発動し青側の6木へ移動、エミーから引いた木で道を9.10方向に伸ばす。

「2軒目の増築、手札を増やして得点を狙います…!」

手札が潤った美姫は家を建てずに増築を選択。点は5点に増え、翠のみが4点のまま取り残されることとなった。

 

 

14巡目

サイコロ:6 10   9 3

 

エミーと美姫の木は止まれど、綾の木は止まらず。

「あ!!行くよ、チーミーチーミーハウス!ってあああああ!!家がない!!」

最大の見せ場と思われた綾のチーミーチーミーハウスは、綾の家不足により儚く断念。道を3本延伸するに留まったものの、エミーの万里の長城計画を砕いた上に自身の盤石な道王の座を確保。ここから2点を伸ばす綾の戦いが始まる。一方でエミーは一般港を持たないため家を建設できず、大量の麦を抱えたままキープすることに。

「今モノポしても増築は1軒、まだよ…」

盤面に麦が出回ったところだが、欲に目がくらんだ翠は使いどきの独占を大切に温存してしまう。追い討ちをかけるように麦が大量に出回る。果たして、翠の行方は…

 

 

15巡目

サイコロ:6 7 9 10

 

綾は道を延伸してエミーの妨害を果たした後、麦を消費してカードを引き騎士を獲得。傷口に塩を塗られるようにバーストしたエミーは、カードを引くため麦を棄て8木に盗賊を移動。引いたカードは…

(Oh…)

街道建設。競争に負けた後では、たとえ使い道があっても精神的に厳しくなってしまう。

続く翠が出したのは9。手札には鉄が6枚、麦が1枚。先程の10と3で麦は出回った。ここで増築×2を放てば、のちのカードレースで優位に立てる。欲に支配され暴走してしまった彼女の思考回路は、残念なことにバグってしまっていた。

 

ボドゲショップ さいころ倶楽部 アルバイトスタッフ大野翠。

店長が影から見守るこの場で、彼女は歴史に残る失態を犯してしまう。

 

「モノポ、麦っっっ!!!!!!!!!」

 

「無いです」

「無いデス」

「無いです」

 

「………え????????」

 

モノポ0枚。

人より多くカタンに触れているはずの彼女が。

モノポ0枚。

 

「…」

声もなく崩れ落ちた翠は、震える手で8.10の家を増築しサイコロを美姫に渡した。

 

 

16巡目

赤:8点 道王 伏せポイント/騎士

青:5点 伏せ街道

黄:5点

灰:5点

サイコロ:9 7 5 3

 

騎士で盗賊を6木に動かした綾は、増築が見えずキープ。エミーの7で盗賊は元に戻され、加えて6枚の土(1枚奪った)と2枚の麦で8.11の家を増築。

シトラス!」

家を建てるべく、2.10.11方向と10麦沿岸部にそれぞれ1本ずつ道を引く。続く翠は、なんと先程の10と9で増築資源を自力で揃えてしまう。欲望に抗えずモノポ0枚した次の手番で、自家製の増築を叶えてしまうのである。いや恥ずかしい恥ずかしい。9鉄の家を増築。美姫は資源を得られずここでも足踏み。棄て気味の初期配置がジワジワ効いてきたか。

 

 

17巡目

サイコロ:8 5 11  9

 

「カード!」

「リッター王まで取られてしまいますが…そもそもみんな手札が枯渇してますネ…」

リッター王を視野に入れたい綾。彼女が引いたカードは騎士。思わず顔がほころび、周囲の警戒を集める。いよいよ終盤戦に突入して来たか。エミーも対抗馬になりたいが、手札の資源が足りずカードが引けない。翠が出した11はエミーにとって福音となるはずだったが、一手遅かった。次に綾が騎士を引くか否かで勝負は決まってしまう。

 

 

18巡目

サイコロ:6 9 10  10

 

バースト回避のためサイコロを回した後に騎士を発動、盗賊を6木に移した綾は幸運にも羊を引き当てる。対抗馬がおらず騎士を引けば勝ちに大きく近く運命のカードドロー。

「行くよ!えーーーい!!!」

 

街  道  建  設

 

「あーーーーー!!!!!」

大きな悲鳴を轟かせターンエンド。対抗馬エミーが動き出す。ダブルドローでエミーは2枚の騎士を手にする。2ターンかければ彼女の手にリッター王が宿る。全ては次のターンの綾の行動に託されることに。鋼鉄の道を1本引いた翠は、続けてカードを2枚ドロー。ポイントと騎士を獲得し7点に。美姫も資源が揃い、14周ぶりに家を建設。6点目を獲得した。

 

 

19巡目

赤:8点 道王 伏せポイント/街道 騎士2枚使用

青:6点 伏せ騎士2枚 騎士1枚使用

黄:7点 伏せポイント/騎士 騎士1枚使用

灰:6点

サイコロ:2 4 3 6

 

サイコロの出目が悪く、なんと綾は何が出てもカードを引けないことに。そんな中…

「あっ、2」

「2で引けん奴おりゅ〜〜??」

「美姫は絶対そんなこと言わないわ」

意味もなく街道建設を発動し、綾のターンエンド。カタン終局は延期された。いや早くして

騎士を発動し盗賊を9鉄に移したエミーは、落ち着いて家を2.3.12に建設。これにより、綾は建てる家を失い増築待ちの身となった。対してエミーは7点、仮想9点に。翠も騎士を発動、8羊に盗賊を移しエミーから麦を奪取。が、続くサイコロに嫌われターンエンド。美姫は6の自引きで5.10の増築を達成し7点に。

 

20巡目

赤:8点 道王 伏せポイント 騎士2枚使用

青:7点 伏せ騎士 騎士2枚使用

黄:7点 伏せポイント

灰:7点

サイコロ:5 9

 

「5!土の3-1と土の3-1と木の3-1で…増築!9点!!あーーー1点足りないよぅ!!」

5の自引きで綾は6.8.9の家を増築、9点に。懸命に点を伸ばすも、まだ一歩届かない。エミーは3枚目の騎士を発動、リッター王9点に。さらにカードを1枚引くことが可能に。

「行くわよ!1234567!89!」

「んんっ!!」

「エミーは絶対そんな声出さないわ」

「ポイントで10点!!嶺上開花(りんしゃんかいほー)!!!」

「だからエミーは絶対そんなこと言わないわ」

 

最後はエミーがリッター王獲得からのポイント引きで10点に到達。20周に及ぶカタンの勝負が幕を閉じた。

 

「おお、やっと終わったか。どれどれ…

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青:10点 リッター王

赤:9点 道王

黄:7点

灰:7点

 

ってところか。まあ反省点は各自あるだろう、幸いまだ9時半だから少しなら話していけるぜ」

そう言いながら、店長は盤面を真剣な眼差しで見つめる。

「麦も鉄も高かったのに、エミーはよくリッター王なんて取れたなあ。木と土の専門港を掴めたのが大きかったかもな。」

「ハイ、でもritter王は運よく翠が11を出してくれたからデース!翠、アリガトデース!!」

「ちょっと、いきなりくっつかないの!!」

「にしても思い出のゲームでモノポ0枚はひどかったなあ翠ちゃん」

「ててて店長!!もう…最低です!!!」

「にしても疲れたね〜美姫ちゃん!お菓子でも買って帰ろうか!」

「いや綾ちゃん、もう夜遅いから…」

 

今夜も楽しそうな声がこだまするボードゲームショップ、さいころ倶楽部。加茂川北高校 放課後さいころ倶楽部の活動録の1ページが、またしっかりと刻まれたのであった。